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現実に分譲業者が工事途中に、それこそいさぎよく倒産してくれればよいものを、資金繰りに行き詰まりズルズルと建築工事費の支払いを滞納、その結果としていつ竣工引き渡しになるのかわからない、というような事態に買い主が巻き込まれないとはいえないからだ。
そうなれば手付金等の保証があるから安心というようなきれいごとで済まされる問題ではなくなってしまう。
工事代金の回収の目安が立たなくなれば、建築中の建物は、建設会社がまず一番に押さえにかかると思ってよい。
建設会社は、未収の工事代金債権の存在を盾に土地を仮差し押さえするとともに、建物の引き渡しもいっさい拒絶するだろう、というのが法律の専門家の意見である。
それでは普通、建設会社にはいくらくらいの未収金があるのかというと、これが結構な額なのだ。
新築マンションの工事代金は普通、手形で支払われることが一般化している。
特に建設業界全体が工事受注に苦戦するような時代は、工事発注者である分譲業者の発言権がますます強くなるわけだ。
そうなると手形を振り出してから代金が決済されるまでの期聞を分譲業者に有利に調整することで、工事代金の大部分が建物竣工後に払われるような支払条件の工事請負契約も可能なのである。
たとえば、工事請負契約時に工事代金の一Oパーセントを小切手で支払った後は、建物上棟時に四Oパーセントを一五O日手形、竣工時に五Oパーセントを二四O日手形というような支払条件の工事請負契約も実際に締結されている。
マンションの場合、上棟は竣工のだいたい三ヵ月ないし四ヵ月前だから、上棟のときに受け取った手形が落ちるのは、竣工して一、二ヵ月後である。
つまり場合によっては一年以上にも及ぶ工事期間中、建設会社が受領したカネは、工事着手金としてのわずか一割だけということになる。
そんな状態で、もし仮に分譲業者が工事途中に倒産でもしようものなら九割のカネが未収ということになってしまうのだ。
分譲業者から工事代金の支払いが滞ったというようなニュースが流れれば、われ先に敷地なり建物なりを押さえようと押しかけてくるのは、建設会社だけではない。
分譲業者が土地を購入するにあたっての資金調達は、一OOパーセント自己資金で、ということはまず考えられない。
借り入れを起こせば借入先の金融機関は抵当権を登記しているから、彼らが土地の権利を主張するのは目に見えている。
当然、金融機関といっても都市銀行だけとはかぎらない。
種々雑多な抵当権者たちが、死体に群がるハイエナのように瞬時に乗り込んでくるのである。
こういう債権回収にかけてはプロの相手を向こうにまわして、マンションの買い主がさらに上手を行くような手立てを講ずることなどできるはずがない。
手付金等の保全のない買い主は、買ったマンションを取得することもできなければ、十中八、九、支払い済みのカネも回収できないという事態に追い込まれるのである。
さらに倒産ではなく、分譲業者の資金繰り悪化で引き渡しが遅れるような事態が起きてしまうと、保証証書を持っている買い主とて安心してはいられなくなる。
普通に考えれば、分譲業者が倒産したというほうが悲惨に聞こえるかもしれないが、保証証書を手にしている人の立場に立てば、いちがいにそうとはいいきれない。
むしろ倒産してくれたほうがどれだけよかったことかということだってありうるのだ。
つまり、いくら保証証書があっても、この保証システムというのは、買い主に建物が引き渡されないことが明白に証明されないかぎりは作動されないからだ。
仮に自分の購入したマンションが、いつ引き渡されるかわからない、という状態に陥ったとしても、この先、もう自分には引き渡される可能性は一OOパーセントなくなったと、銀行や保険会社に対して証明することはむずかしい。
そうなると結局、万が一の場合に効力を発揮してくれて支払い済みの資金を回収できるものと信じて疑わなかった頼みの綱の書面が、フタを聞けてみればただの紙切れにすぎなかったということにもなりかねない。
もちろん法律上は売り主の分譲業者に対して引き渡し遅延による損害賠償を請求することもできるし、契約の解除もできるわけだ。
けれどもそういった法的手段に訴えるのには、弁護士等への経費が新たな出費となるわけだし、一年、二年という時間と労力が費やされることは覚悟しなければならないのである。
さて、これほどリスクが高い買い物であるにもかかわらず、青田売り形式が普及したのはなぜだろうか。
たしかに以前はそれなりの理由があったようだ。
というのは、青田売り形式が、売り主だけでなく、直接買い主のメリットにもつながっていたからだ。
分譲業者には可能な限り早く売り出してもらい、買うほうはできるだけ早く決断して、早々に売買契約を済ますことが、買い主が値上がり利益を確保することにつながったのである。
かつてのバブル華やかなりし頃、どんなマンションでも月日の経過とともに値上がりしたこの時代は、着工前に購入したマンションの価格が、竣工引き渡しの時期には一・五倍になっていたという例もあった。
だいたい当時は、分譲業者の営業マン自身が自社の物件を買いあさっていた時代なのである。
引き渡しの直後に、未入居物件として転売して小遣いを稼いだという営業マンの自慢話は、あちらこちらから聞こえてきた。
それがいまとなってはまったく逆に、早く買うと必ずといっていいほど買い主が値下がり損をかぶる時代へと急変してしまった。
竣工してみたら、まわりにもっとお買い得な物件が売りに出されているうえに、引っ越してみたら他の住戸はキャンセルが続出、ほとんど空き室だらけで不用心でしかたがない。
こういうグチを聞かされると青田売りはいまや売り主のためだけにある販売形式であって、買い主にしてみれば、さまざまなリスクを背負い込むだけで利益にはつながらないという認識を買い主はまず持つべきなのである。
工事が進めば進むほど、それだけシロウトでも見抜ける内容は増えてくる。
各住戸ごとの日当たりや風通し、眺望だって竣工してしまえば、もうごまかしようがない。
実はある営業マンにいわせれば、ここに業者の本音があるという。
「欠点が現実には見えないうちに、モデルルーム見学だけで勝手に誤解してくれる人たちが実際にたくさんいるわけですよ。
そういう人たちにどんどん買ってもらおうというのが、青田売りに隠れたわれわれ業者の本音なんです。
まあ一番隠したいのは、本当はこのマンション、どの程度人気があってどれくらい売れたかということですけどね。
いま申し込まないと他の人に買われちゃいますよっていうお決まりの殺し文句で購入検討者の気持ちをあおっておきながら、実はまだどこも申し込みが入っていないなんてこともありますしね。
竣工して入居が始まれば、それだってもう隠せないじゃないですか」。
一、売れ残り住戸の値下げ販売もありえるのか、営業マンにズパリ尋ねる。
二、設計図書のうち、検討住戸に関する図面(平面詳細図、天井伏図、各部屋展開図、電気配線図等)のぺ|ジはすべてコピーをもらう。
三、手付金等の額が売買代金の五パーセントもしくは一OOO万円を超える場合には、必ず保証証書を発行させる。
不動産屋の免許や資格について正確に把握できている人は少ない。
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